ステマ 口コミサイト、やらせ書き込み 歯科・エステでも相次ぐ

■「不当表示」恐れ 業者特定急ぐ

 飲食店の口(くち)コミサイト「食べログ」で、やらせ業者が好意的な口コミ投稿を有料で請け負っていた問題で、飲食店以外にも矯正歯科やエステサロン、美容外科などの口コミサイトで同様の“やらせ書き込み”が相次いでいることが14日、分かった。こうした行為は「ステルスマーケティング」とも呼ばれる。消費者庁は、やらせ書き込みについて景品表示法の「不当表示」に抵触しないか調査に乗り出しており、サイト運営会社もインターネットの接続業者側に投稿者の情報開示を求める方針だ。

 “やらせ書き込み”とみられる口コミが相次いだのは「クインテット」(東京)が運営する投稿サイト「口コミ広場」。

 クインテットは、美容外科▽矯正歯科▽エステ▽整体▽岩盤浴▽美容院▽ヨガ−などのジャンルごとに、利用者が感想を書き込む掲示板を運営。月間利用者は延べ200万人に上る。

 同社によると、平成22年冬から海外のサーバーを経由した書き込みが相次ぐようになった。同一のIPアドレス(ネット上の住所)から特定の歯科医院やエステ店、美容外科への好意的な書き込みが続いたため、不正な書き込みと判断した。同様の書き込みは、削除後も、国内の別のIPアドレスから続いたという。

 クインテットの担当者は「店舗側から『なぜ削除するのか』と問い合わせが来ることもあり、やらせ業者の関与は明らか」と話す。このやらせ業者は、約30の店舗や医院、クリニックから依頼を受けていたとみられるという。

 また、すでに書き込まれた否定的な意見については、企業への誹謗(ひぼう)中傷対策を行う大手企業などを名乗り、「3件15万円で削除できる」などと持ちかけるケースもある。都内の矯正歯科医院の関係者は、「断ったところ、今度は『逆によい声を書き込むこともできる』と持ちかけられた」と証言している。

 クインテットによると、「誹謗中傷がある」などと書き込みの削除依頼があった後、同社が「削除基準に満たない」として拒否したところ、逆にその店舗に対する好意的な口コミが連続して投稿されたケースもあったという。

 ■「話半分」心構えを

 ITジャーナリスト、井上トシユキ氏の話「ステルスマーケティングは平成16年ごろから、芸能人やモデル、有名ブロガーに商品などを提供、好意的な書き込みをしてもらう手法として定着した。こうしたやらせ口コミもその一種とみられ、悪意がつけ込む機会は広がっている。ネットの情報は玉石混交ということを理解し、話半分として受け取る心構えが必要だ」

 ■「不当な誘導」防止へ 消費者庁も関心示す

 口コミサイトで、業者が好意的な投稿を有料で請け負っている実態に、消費者庁も関心を寄せている。今後、景品表示法(不当表示)に抵触しないか、悪質なケースについては情報収集に乗り出す。

 消費者庁は「やらせ業者により、消費者の選択がゆがめられたり、不当に誘導されたりすることがあってはならない」としている。サイトを見ている人が口コミサイトの評価を基に判断していることを踏まえ、被害報告があった案件については情報収集する方針だ。

【用語解説】ステルスマーケティング

 宣伝でありながら、そうでないように見せかける販売促進活動。「ステルス」は「こっそり行うこと」の意。一般消費者を装い、ブログや評価サイトで商品を好意的に紹介する行為などを指す。インターネットの掲示板では「ステマ」などと略されている。