今後どうなる? LTEの未来と端末選び

 NTTドコモが新しい世代の携帯電話方式「LTE」を使ったサービス「Xi」(クロッシィ)の提供を始めて1年が経過した。利用できる端末は、データ通信専用のUSB型端末から、モバイルWi-Fiルーター、タブレット端末と広がり、2011年終盤にはスマートフォンでもXiを使えるようになった。
2011年は国内におけるLTE元年と言えるだろう。12月末のXi加入者は113万9400と、急速にその利用者を増やしている。特にXi対応スマートフォンが出そろってきた12月には49万500の純増というビッグセールスになった。2011年末のXi契約の半数近くが12月の契約者ということで、Xiスマートフォンへの期待の高さがわかる。

 サービスエリアも広がってきた。2011年末には、東名阪以外でも各県の県庁所在地級の都市でサービスが提供されている。こうした流れから2012年はXiすなわちLTEサービスが本格化する年になることは確実と見られる。

 しかし、気になることはある。Xiスマートフォンを買って大丈夫なのか。今後、ちゃんと普及しエリアは拡大されていくのか。そもそも“ガラパゴス化”の不安はないのか。NTTドコモのXiサービスとLTEを取り巻く状況を整理してみよう。

LTEって主流になるの?

 まず、「LTE」がどのような位置づけにあるのかを確認したい。最初に答えを書いてしまうと、「世界中で次世代の通信方式として使われる可能性が最も高い規格」ということだ。

 日米欧を含む世界の多くの国で、スマートフォンへの急速な移行が進んでいる。スマートフォンは、従来型の携帯電話に比べて多くのデータ通信を行う。専門的には「トラフィック」が増えるといった言い方をする。急増する無線データ通信のトラフィックを、限りある周波数帯でさばくことが、今後の各国の携帯電話事業者の最大の課題になっているのだ。

 そこで、LTEが注目されている。LTEは周波数利用効率が高く、同じ周波数帯で3Gよりも多くのトラフィックを処理できる。LTEに移行できれば、トラフィック急増への1つの対策になるからだ。LTEには大きく2種類の技術的な方式があるが、いずれもLTEのファミリーとすれば、基本的には世界で共通して3Gの次はLTEに向かっている。「LTEにしてしまったら国内でしか使えない」といったガラパゴス化の心配は、方式的にはしなくてもよさそうだ。

 国内でも、先行するNTTドコモに次いで、KDDIが2012年12月からLTEのサービスを開始することを表明している。ソフトバンクモバイルイー・アクセスも、LTEの実証実験を重ねている。LTEはまだルーキーだが、次の時代のエースとしての役割をすでに認められた存在と言える。

エリアは広がるの?

 東名阪からサービスが始まったNTTドコモのXi。すでに全国の県庁所在地やそれに並ぶ都市ではサービスが始まっている。1年で大きくエリアは広がった。

 しかし、まだXiを使えないところが国内の大多数の場所であることも事実。首都圏でも東京23区内はかなりサービスエリアが面で提供されるようになってきているが、一歩郊外に足を伸ばすと主要駅近辺にエリアが点在するという状況だ。地方では県庁所在地の駅前がようやくエリアになったレベルであり、どこでも使える3GのFOMAに比べるとその差は歴然としている。

 だからといって、Xiはダメだと決め付けるのは早計だろう。そもそも新しいサービスが広まるには時間がかかる。それに、Xi対応端末は3GのFOMAの通信機能を備えているので、Xiのエリア外でも既存のFOMA端末と同様に使えるのだ。何が何でもXiで通信する必要がある人は除き、多くのケースではXiの高速データ通信とFOMAの広いエリアを組み合わせた価値を享受できればいいのではないだろうか。

 NTTドコモは、Xiのエリア展開を当初の計画よりも前倒しで進めている。2011年10月の発表で見ていこう。当初の計画では、2011年度末(2012年3月末)に基地局が約5000局で人口カバー率が約20%の予定だったが、これを7000局、約25%へと引き上げる。さらに2012年度末(2013年3月末)には基地局を約2万局(当初計画1万5000局)、人口カバー率を約60%(同約40%)にする。そして2014年度末(2015年3月末)には基地局を約5万局(同3万5000局)、人口カバー率を約98%(同約70%)にまで拡大させるという。Xiを利用できるエリアは急速に広がっていくのだ。

端末は、今買っても大丈夫?

 そして、最大の難題が、「Xi端末は買いか」というもの。Xiの高速データ通信は明らかにFOMAよりも快適だし、最新端末を持っていることも気持ちのいいことだったりする。

 ただ、「最新の機種だから」といった理由だけで選ぶには、まだXiスマートフォンは熟しきっていない。いくつかの考えておきたいポイントで見ていこう。

 Xiスマートフォンに共通の最大の弱点があるとすると、バッテリーの持ちだろう。どうしても、3GのFOMA専用のスマートフォンに比べて、消費電力が多く使える時間が短くなる。

 各社は、大容量バッテリーを採用したり、省電力で駆動させる対策を施したりしている。ただ、思った以上にバッテリーが持たないという事態が起こりうることは知っておきたい。特にXiエリア外で充電できない状況に長時間いることが多い人は注意が必要だ。そのため例えばLGエレクトロニクス・ジャパンは「Optimus LTE L-01D」の消費電力をソフトウエアアップデートで改善する計画だという。

 端末は4機種あるが、いわゆる“初物”であり、これから登場する二代目以降では改善されてくる部分があるかもしれない。一般に2年縛りになってしまい、端末はおいそれと買い換えられない。機能や性能、大きさやデザインは自分の用途にフィットするのか、十分な吟味は必要だろう。

 もう1つ、押さえておきたいのが料金について。基本料金は2年契約で月額780円(タイプXiにねん)。これには無料通話は1分もついておらず、通話料金は30秒21円となる。これは、FOMAで最も基本料金が安いプランで適用される通話料と同じで、割高な設定といえる。そこでNTTドコモが提供するのが、月額700円のオプション「Xiカケ・ホーダイ」。これを適用すると、相手がNTTドコモの場合は通話が24時間無料になるのだ。要するに、電話をかける相手がほとんどNTTドコモの利用者であるなら、通話料金を大きく引き下げられるオプションだ。

 パケット定額サービスもFOMAとは異なる。フラットタイプで月額5985円(Xiパケ・ホーダイ フラット)。これはFOMAのパケ・ホーダイ フラットの月額5460円より525円高い設定となっている。なお、2012年4月までは月額4410円となるキャンペーンが適用されるので、その間はリーズナブルに使える。

 そして、Xiの最大のメリットは、エリア内ならば高速なデータ通信ができることだ。Webサイトをブラウジングするだけでも、ページがサクサクと遷移していくさまは、とても心地よい。動画や大きなファイルのダウンロードなども快適だ。全機種デュアルコアCPUを搭載し、小気味良い操作感の提供にも務めている。

 さらにいずれの機種もWi-Fi機器のテザリングが可能なことも魅力の1つ。Xiなら追加料金なしでテザリングできる。パソコンやタブレット端末などを外出先でさっとインターネットに接続でき、モバイルWi-Fiルーターを持ち歩かなくてもいい。バッテリー消費との兼ね合いがあるが、近くにWi-Fiスポットがないときの緊急回線としてなら十分に使えるだろう。

 Xiスマートフォンは、ようやく産声を上げたところ。全方位で万全とは言えないとしても、非常に大きな魅力と将来性を持っている。これから来る高速通信の世界を先取りして、その魅力を今すぐ堪能できるXiスマートフォンを、あなたも手にしてみてはいかがだろうか。