「正義のハッカー」育成…初の全国CTF大会

ハッカー日本一を目指して情報セキュリティーの知識や技術を競うコンテスト「CTF」が18、19日、初めて九州工業大(福岡県)で開かれる。

 海外では若手技術者の登竜門ともなっているハッキングコンテストだが、日本では「ハッカー=悪」の誤ったイメージからタブー視されてきた。防衛産業や中央省庁へのサイバー攻撃が相次ぐ中、ようやく人材育成の場として見直されてきた形だ。清く正しくハッキング技術を競い、世界に通じる「ハッカー」を育成できるか――。

 CTFは、ハッキングの技術を駆使して対戦相手のサーバーに侵入したり、相手の攻撃から防御したりする「模擬サイバー戦」だ。

 今回、コンテストを計画したのは、情報セキュリティー会社に勤める技術者や研究者ら12人の有志で、NTTデータ先端技術(東京)などの協賛を募って実施にこぎつけた。

 予選となる今回は、現時点で九州工大、筑波大、名古屋大、熊本高専などの学生を中心に7チーム(各チーム定員4人)が参加。攻防に必要な知識を問うクイズ形式を採用し、暗号やプログラム、ネットワークなどに関する計50問に制限時間10時間の中で挑戦する。

 今後は北海道と東北、関東、関西、中国地方でも予選を開き、全国大会は各地区の勝者による対戦形式で行う計画だ。大会実行委員長を務める竹迫(たけさこ)良範さん(34)は「将来の情報セキュリティーを担う若手技術者を発掘したい」と話す。

 海外ではCTFの歴史は長く、米・ラスベガスで毎夏開かれるハッカーの祭典「デフコン」には、CTFに世界から約300チームが参加。決勝には政府関係者が優秀な人材のスカウトに訪れるほどレベルが高い。

 政府機関に対するサイバー攻撃に頻繁に見舞われている韓国の場合、政府の後押しもあって学生を中心としたハッキングのコンテストが盛んで、ロシアやマレーシア、オランダでも定期的に開催されている。

 一方の日本では、本来、コンピューターやネットワークの技術に精通した人物を指す「ハッカー」という言葉が、技術や知識を不正行為に使う「クラッカー」と混同され、ハッキングのコンテストはなかなか開かれなかった。2003年には経済産業省が高校生によるCTF大会、通称「ハッカー甲子園」を計画したが、「国が“犯罪者”を育てるなんて」との異論が出て開催は見送られた。

 ただ、昨年、三菱重工業などへのサイバー攻撃が相次いで発覚して以降、CTFを人材育成の場として見直す動きが出てきた。

 ◆CTF=サーバーに保存された情報を旗に見立てて攻防を繰り広げることから、「キャプチャー・ザ・フラッグ(旗取りゲーム)」と呼ばれる。日本では、社会人や大学生の混成チーム「sutegoma2」が昨年、世界最高峰とされる「デフコン」のCTF決勝に進み、注目された。