KDDI対ソフトバンク 「乗り換え」顧客争奪戦

携帯電話市場最大の商戦期である3月に入り、同じ電話番号で別の携帯電話サービスに移る「番号持ち運び制度(MNP)」をめぐって各社の顧客争奪戦が激しさを増している。


 2月のMNPの利用状況は、KDDIが4万3300件の転入超過で5カ月連続首位だったが、同じ転入超過のソフトバンクモバイルが3万9800件と肉薄。販売店では最大5万円程度のキャッシュバックなど他社からの乗り換えを当て込んだキャンペーン合戦が繰り広げられている。

 KDDIは昨年8月まで17カ月連続で転出超過だったが、米アップルの人気スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」の販売直前の昨年9月から6カ月連続でMNPが転入超過となった。同10月からはMNPで首位を続けている。

 MNPはサービス事業者を変えても同じ電話番号を使えることから、事業者を変更しやすくなる制度で、ブランド力のバロメーターといわれている。KDDIはアイフォーン販売を機に他社からの転入を対象にしたキャッシュバックキャンペーンを実施。なかには3万〜5万円といった“大金”のキャッシュバックを掲げる量販店もあり、契約変更をあおっている。

 この“あおり”で想定を超えた契約・解約を生み出すケースが出ている。ソフトバンクは5日、プリペイド携帯電話の1年以内の解約に4月4日から9975円の違約金を科すと発表。理由は「当社のプリペイド携帯をすぐに解約して他社に契約するケースが最大で月間5000件前後ある状況」(ソフトバンク関係者)のためだ。

 例えば、KDDIの契約が終了時期だったり、2台目の携帯を買う場合、一度違約金が不要なプリペイド携帯を購入し、すぐ解約してキャッシュバックの多いサービスに加入するケースが増えているという。

 漸減傾向にあるプリペイド携帯需要だが、キャッシュバックキャンペーンが始まった昨年12月から「短期解約が前年同月比で2倍以上増えた」(同)。

 プリペイド携帯を売っているのはソフトバンクだけで、競合サービスのMNP転入を手助けしたくはないと、違約金導入に踏み切った。

 ただ、SMBC日興証券の森行真司シニアアナリストは「独占状態だったドコモから他社に利用者が移るのは当然で、すみ分けが進んでいるだけ」と分析する。

 その上で「MNP獲得競争が過ぎると、利用者が常に回り続け、事業者にも利用者にも不幸な状態になる」と過度の争奪戦に警鐘を鳴らしている。(芳賀由明)