フェイスブックが10億ドルで買収する「インスタグラム」とは?

ソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)最大手の米フェイスブックが9日、スマートフォン(高機能携帯電話)向けの写真共有アプリを開発しているインスタグラムを10億ドル(約816億円)で買収すると発表した。10億ドルとは、すごい金額だ。

 ネットバブルの再来を思わせるような今回の買収に、創業1年3カ月の新興企業に、なぜそれほどの価値があるのかと、いぶかしく思う人も多いのではないか。

 では、インスタグラムとはどのような会社で、なぜそれほどの価値があるのか。

 インスタグラムは自社の製品を友人と楽しく写真を共有するためのアプリとうたっている。携帯電話で撮影した写真に、十数種類の中から選んだフィルターを使用して、ユニークな加工(例えば、古びたポラロイド写真のような風合いを出したり、ピンクっぽい色合いにするなど)を施すことができる。キャプションや撮影場所を書き加えることもでき、フェイスブックツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)を介して友人と共有することも可能だ。

 だが、フェイスブックにとって本当に価値があるのは、インスタグラムがごく短い期間で作り上げたモバイルコミュニティーだ。

 インスタグラムの登録会員は3000万人以上に上り、今や最大規模のSNSの1つとなっている。友達の行動を「フォロー」したり、お気に入りの写真を「いいね」ボタンで共有したり、それらにコメントを付けることも可能だ。ダウンロードされた写真は10億枚以上、1日当たり約500万枚にも上る。参加率も驚異的だ。「いいね」ボタンがクリックされる回数は1秒当たり575回、コメント数は81以上だ。

 2010年12月21日には、アプリ史上最短で100万ダウンロードを達成した。また11年にはアップルのベストiPhoneアプリにも選出されている。

 だが、他の多くのアプリやSNS同様、インスタグラムもまだビジネスモデルを見いだすことはできていない。だが、米女性用衣料チェーン、アンテイラーや米カジュアル衣料メーカー、アーバンアウトフィッターズなど自社ブランドの宣伝用にアカウントを作成している企業もあり、多くの著名人や政治家も会員になっている。

 やはり買い手候補に名前の挙がっていたツイッターも、インスタグラムと関係が深い。インスタグラムの最高経営責任者(CEO)で創業者のケビン・シストローム氏は、ツイッターを生み出したオデオ社でインターンとして働いていた。06年にスタンフォード大学を卒業したあとは、米インターネット検索大手グーグルにも2年間勤務し、電子メールサービス「Gmailジーメール)」や情報収集サービス「Google Reader(グーグルリーダー)」の開発に携わったほか、経営企画部門にも所属していたことがある。